医者から検査結果を聞いたのだけど、正直おもったことは、

「おいおい、なんもできねーじゃん」って。

まず、肺に関して言えば、肺がんだけでなく、間質性肺炎も患っていると。

この間質性肺炎も、原因は特定できないのだけど、おおよそは喫煙が原因で、症状としては、肺機能がよわくなって、呼吸ができなくなってしまう、というものらしい。

一番の問題は、抗がん剤を使ったショックで、それが一気に進行して死に至る、というリスクがあるとのことだった。

それで、手術はしたとして、抗がん剤の治療はできない、という話だった。

もっと言うなら、未だ間質性肺炎になっていない人も、抗がん剤の副作用として発症し、死に至るケースもあるようだ。

イレッサ、という抗がん剤が、治験や、その後の利用でも欧米人では発症しなかったのが、日本人に使った際に、副作用として間質性肺炎を引き起こし、相当数の方がなくなった、という事件があったと。

治験のルールが変わったことによる弊害だ、とも言われた事件でもある。

とにかく、この間質性肺炎は今の医学でも治療法もなく、かなりやっかいなものだ、と医者も困っていた。

で、もう一つの問題でもある、動脈瘤。

どうも、腹部にあるようで、大きさとしても4cm程度のこと。

いますぐ破裂するリスク、という意味では、すぐにでも手術をしないといけない、というほどのものでもないが、放置してこれ以上成長すれば、そのリスクはかなりのものになってしまう、とのことだった。

医者が言うには、

もし、肺がんの摘出手術を優先した場合、術中にこちらが破裂しないとも限らない。

破裂したとしたら、助かる可能性はかなり低くなる、とのことだった。

こんな時、「私、失敗しないので」が決まり文句の女医だったら、いっきにやっちまうんじゃねーかな、なんてことも思ってしまうけど、

しょせん、そんなのはドラマの話でしかないわけで。

とにかく、医者の口からは厳しい現実しか出てこない。

そしてなにより、その席には、患者である親父も一緒にきいているってのが、なんともな、と。

ほんと、今の時代は、こうもはっきり言ってしまうのかと。

その後、兄弟3人だけで話したんだけど、一番上の兄貴は、

「おれ、そんな話されたら、生きる気力なくなるわ。絶対俺には言わんといてって、嫁にいっとこ。」

だって。

でも、それは正直な気持ちだと思った。

今、親父がどういう気持ちなのか、精神状態なのか、ちょっと心配になってしまう。

まぁ、その肺がん以外の話も衝撃だったんだけど、もう一つ衝撃だったのが、

「肺がんの大きさなんですが、今、4cmくらいです」

「4cm?」

「なので、できるだけ早く手術できればとは思うんですが、動脈瘤もありますので、どちらを先に手術するかを決めなければなりません」

とのことだった。

ちょっとまって?

昨年末の時点では、まだ2cmっていったよな。

まだ1か月しかたってないけど?もう4cm?

ちょっと、成長はやくね?

その後、家族会議でもって、肺癌か、動脈瘤か、どちらの手術を優先すべきか、という話になった。

その間に、心筋梗塞でのかかりつけの町医者にも意見を聞いてみたが、

その町医者は、昔、同じようにがんと動脈瘤を患った患者を診ていたことがあったようで、

その時はがんの治療を優先して手術をおこなったたものの、懸念してた動脈瘤の破裂が起こってしまい、それが原因で亡くなった、

という話をしていた。

その町医者としては、動脈瘤の治療を優先させるべきだった、と後悔したようだ。

ただ、それはそれ、うちの親父は、うちの親父。

別の話だ、と思ったりもした。

時間がたって、転移してしまうリスクを取るか、

もし何かの衝撃があった場合に、すぐにいってしまう動脈瘤を放置するか

はっきりいって、ギャンブルでしかない。

どちらをとっても、リスキーなことしかない。

こればっかりは、本人の気持ちを優先するしかない。

いや。それは嘘だな。

自分がたちが、人の命を、親の命を決めることができない。その責任を負うことができない、ただそれだけだと思う。

医者だって、そうだろう。

この選択につて、医者がどうアドバイスしたか。

なにもしなかった。

町医者だけは、自分の後悔から、動脈瘤を優先したい、といった。

総合病院の、肺がんの医者、動脈瘤の医者、それぞれは、何も言わなかった。

患者自身が選んでください、としか言わなかった。

時代だな、と思った。何かあった場合を考えた時、その責任を負わされたくないだけなんだなと。

まぁ、そんなもんだね。

身内ですら、決めろと言われたら、こわいよ。

赤の他人である、医者が、いえるわけねーわなってね。

いずれにしても、治療を遅らすという選択肢はあり得ない。

だから、どちらにするにしても、病院のスケジュールからずれるほどの回答遅延はあり得ない。

回答期限は、一週間。

それまでに、どちらを優先するか、患者である、親父自身がだすことになる。

もちろん、自分は、息子という立場からの希望は伝える。

ネットの情報が、嘘か本とかはわからいないけど、あらゆる選択肢を考えて、判断できる材料は取っておく。

今にして思えば、何かがあると、大体自分がいろいろ調べて、その情報をまとめる作業をしている気がする。

上の兄貴二人に比べて、自分は立派に大学も、大学院までも出させてもらっているってのもあって、そういった頭使う作業は、大体自分に回ってくる。

兄貴に説明するのは面倒なんで、そこはスルーするんだけど、

このがんってやつは、いつ何時、自分も含めて、家族に発生してもおかしくない病気だから、この際だと思って、いろいろとまとめておこうって。

それが、もし、おやじがどうなろうとも、一番の財産になるはずだって。

で、一週間して、親父が出した結論は・・