更新がめちゃくちゃ久しぶりになってしまいました。ちょっと5月終わりぐらいから本業がかなり忙しくて、なかなかゆっくり勉強する暇もなし、でして。

で、今回は元ネタをちょっと変えてみました。私も会社経営をしている関係で、普通の新聞はみませんが、日本経済新聞を読んだりします。

日経新聞はすでに行われているビジネスを宣伝するというよりは、新規のものを広めたり、企業の宣伝として記事にしたりという性質が強いので、主に将来こういったことができるかも、という内容が多分にあります。そういった意味で、がん治療の未来として、ひとつの方向性がみれたらな、という思いで記事を起こしてみました。

 

日経新聞はその名の通り、会社情報や経済の話、それに関連しそうな政治の話など、主にビジネス関連の新聞。

もちろん、企業がもつ技術的なこと、発明なども、その実用性や商売になるかにかかわらず、載っていたりする。

そして、日々気にしてみると、おどろくほど「がん」に関する各社の情報も載っていたりする。

それらの記事がすべて正しいか、というか、その掲載する理由がまちまちなので、純粋に治療について云々、というはなしではなかったりするが、製薬会社や医療現場での方向性や、将来どうなっていくのか、といったことを見ていくには役立つ情報なのかもしれない。

私は、元機械開発設計の技術者であり、今は一経営者であり、コンサルであり、そしてなによりがん患者の身内というアイデンティティーのもと、これらの記事について考察してみたいと。

そして改めて驚いたのが、小さな記事も合わせれば、日経新聞にはほぼ毎日、がんに関する記事が2~3はでていることです。

ただ、その新規性や内容の深さにつては、大々的なトピックになるような記事であるかはどうかは、また別の話ですが。

 

2019年のGWと、ちょっと古い話になりますが、こんな記事が。

癌治療を遺伝情報によって薬を選択すると、適切な抗がん剤が見つかる、というような話があったので、そちらについて思うところを。

記事全文を丸っと載せるわけにはいかないので、ある程度まとめながらになります。

 

がん、遺伝情報で薬選択 ゲノム医療を保険適用、来月から

癌治療において、抗がん剤がうまく効かなかった場合や、適切な標準治療がない場合に、そのがんの遺伝子情報を調べることにり、他の抗がん剤を用いたりして効果を上げよう、という話です。

その中で、がん細胞の検査が必要になるわけですが、その検査が今回保険適用になることで、より一層そういった方向での治療が進むのではないかというものです。

これまではこの遺伝子検査自体が大変だったようですが、ようやくその方法が保険適用できるほどの確立されたようです。

「がん遺伝子パネル検査」とは

その中で用いられるのが、がん遺伝子パネル検査、というものです。

なにかというと、

生検や手術などで採取されたがんの組織を用いて、高速で大量のゲノムの情報を読み取る「次世代シークエンサー」という解析装置で、1回の検査で多数(数十~数百)の遺伝子を同時に調べる。

というものです。

詳しくはこちらをご覧ください。

国立がん研究センター
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/genomic_medicine/genmed02.html

 

要するに、その人の癌の遺伝子情報に基づいた治療薬を選べるようにする、というものです。

それによって、肺がんの患者さんが、実は大腸がんの抗がん剤が効果ありそう、というようなこともわかったりするようです。

こちらの検査は、56万円で決定しました。

患者負担が3割と、1カ月の自己負担の上限を定めた高額療養費制度を利用できれば、負担はさらに抑えられます。

ただし、現状では、標準治療がない癌だったり、治療で効果が見られない患者さんのみ適用とのことで、その適用範囲は全患者の1%程度とのこと。

加えて、仮にこちらの検査にて治療方法を決めたとして、効果があるのが1~2割、また遺伝子情報がわかったとしても、適切な標準治療があるかどうか、というのもあるようです。

まだ運用が始まったばかりなので、情報量が圧倒的に少ない、というのも当然あります。

何事もそうですが、新しいものは前例がないから新しいわけで、これから数を増やして、改良だとか精度を上げるとか、運用を改善するとか、そういったことになっていくのでしょう。

1%という数字が非常にちいさいのも、まずはそのあたりをつぶしていかないといけない、という意味では、適切な数値なのかもしれません。

そして治療効果はもちろんですが、がんの遺伝子情報を得て、次の策につなげる、という意味では、1%といえど、保険を適用して検査数を増やしていくことは、大いに意味のあることと思います。

 

他にも、患者、その家族としてのメンタルの部分に影響を与えるかもしれません。

うちの父親もこれ以上の抗がん剤治療はなくなっているのが現状です。幸い、今のところ、その後の再発はないようですが、いつまた再発するとも限りません。

再発したら、次の一手がない、というプレッシャーは、恐怖でしかありません。そういった精神状態の中、お金さえがあれば、民間療法を行うのもうなずけますし、実際、やるでしょう。。

効果が1~2割といえども、次の一手があるという情報があるだけで、精神的にもプラスになると思います。

 

遺伝子データの活用とその将来は

とはいっても現実的には上記の数値がしめしている通り、今時点での治療への効果というのはあまり期待できないのが現状です。

ただ、データを積み重ねて精度を上げたり、膨大なデータから新たな方針が見つからないとも限りません。まずは、そういうのが期待できる、というところまで検査からデータ処理まで持っていくことが、おそらく第一段階として考えているところなのではないでしょうか。

近い将来、数年内には、ルーティーンを確立して、もっと検査のハードルを下げてもいいんじゃないかな、とおもいますが、そのあたりは財政も絡んでくるのでしょう。

 

患者感情からしたら、

治療の可能性があるならもっとやってくれよ!って思いますし、

財政という点では費用対効果の最大点を探っての判断かと思います。検査すればするほど、確実に税金を使います。

今の財政、医療保険が、どれだけそれを許してくれるのか。それは、政治家や官僚しか触れない部分になってしまいます。

 

遺伝子データの解析と活用の取り組みは欧州で先行しているようです。英国では病気の予防にまで活用しようとしているようです。

そういった活用については、いろいろ倫理的な部分で議論があるとおもいますが、こと、病気予防については進展するといいな、と思います。

その遺伝子情報で人を判断する人間が出てきてしまうと思いますが、

予防が効果的であること、

治療が確立されてることと条件がそろっていれば、

ちょっと苦労はするけど、差別されることではない、という社会が来るんじゃないかな、と思います。

遺伝子情報で差別が発生するといいう前提で話してしまっていますが、現実に、今でもあるといえば、ありますから。特に、家系を大事するような一族では。最近もちょっとニュースでやってましたけどね。

病気以前の話ですから。そういうところは。で、話を戻して。

 

記事の締めでは、今回の保険適用を機に、大量の遺伝情報に基づく医療の効率化や高度化を進められるかが焦点になる、としています。

まさにその通りだと思いますし、高い金額負担して、その積み重ねができないというなら、何の意味もありません。

企業と病院の儲けと、装置製造企業の自己満足でしかありません。

 

患者の費用負担と、医療機関の負担とで

そもそも56万円ってどういう基準で決められたのか、という話もあります。

今は試験的な部分もあろうかと思いますが、検査数を増やせば、当然検査費は下がると思います。

こちらの遺伝子情報の作成は、人ではなく機械がやる作業に思いますので、数を稼ごうと思えば、物理的には装置台数の話になります。

現在、1%の患者さんにしか適用されないようですので、検査数を増やす=検体を得る、という部分では医者の手を今以上に煩わすことはほぼないでしょう。

検査技師のような人は必要かもしれませんし、この部分もネックになる可能性はありますが、そのあたりはどうなのでしょうか。

セットする人員は必要になると思いますが、医者のように特別な資格がいるわけではないと思いますので、人件費が上がったとして、1回の検査56万円に対しては微々たるものです。

装置を扱う、セットする人数が倍になっところで、大した影響はありません。
(あくまで、医者のような特別な資格なしにセットできれば、の話ですが)

では、判定の部分はどうか。

判定の部分は、遺伝子情報と、今考えられる薬とのマッチングは装置でできるはずです。

むしろそのほうが人間がやるよりは見落としがないでしょう。
検査して判定すべき遺伝子情報は数十にも上るそうなので、それを人がやってしまうと、見落としが怖いです。

得られた遺伝子異常方から、最大数の有効な治療方法を羅列するような情報出力までは機械がやるとして(AIなんてのはこういった部分に大いに使うべきだとおもいます)、その組み合わせだとか、現状の患者の病状だとかを考えて、といった部分では、やはり医者の出番かな、と思います。

この部分でようやく医者の負担が出てきそうです。

こういった判定にどれだけ医者が時間と神経を使うのかは、私も医療関係者ではないので何とも言えません。

が、単純にこうった計算をしたとして、今1%の検査数を2%にしただけでも、費用は2/3くらいにはなるんじゃないでしょうか。

検査装置がもう一台必要として、かつ、同じ額だとしても、です。

検査装置がリピートでさらに下がって、検査数も5%くらいになって、となれば、30万円とかからないのではないでしょうか。

そうなれば、情報としての遺伝子データはかなりの量になります。加速度的に増えていくものです。

それだけのデータがあれば、以降の治療や新薬開発において、有用なデータになることは間違いなはずです。しかも、国が管理していれば、あらゆる企業がその情報にアクセスできれば、企業としてもコストダウンにつながること間違いありません。

それは薬の価格に反映されます。

ぜひ、国にはそういった将来も含めて、線を引いてもらいたいですし、言われなくても既にやってることと思います!

医療研究では4年前の情報はすでに古いといわれます。

4年といわず、2年間のデータが古い、といわれるようになると、より正確な治療や開発ができるのかな、と思うこの頃です。